海洋雪の降下
水深200メートル、観る者は極寒の暗闇の中に宙吊りになり、眼前を綿雲のような白灰色のマリンスノーの凝集体が音もなく降りてゆくのを目撃する。それぞれの塊は直径1〜4ミリ、死んだ円石藻の方解石片、珪藻の殻、粘液糸、消化された細胞の残骸が何日もかけて圧縮されてできたもので、遥か上方の有光層から辛うじて届く450〜490ナノメートルの青白い残光に縁だけを照らされ、深い藍色の闇の中に幽かな光輪を帯びて漂う。その合間を、滑らかで蝋質の暗褐色の糞粒が3〜10倍の速さで一直線に突き抜け、まるで小さな魚雷のように雪のカーテンを貫いていく。凝集体と凝集体の間には、透明な細胞外多糖体であるTEPの粘液膜が崩れかけた蜘蛛の巣のように震えながら広がり、まばらな光の端でだけ虹色の輪郭をにじませる。この光景全体が極端なスローモーションの文法で支配されており、有機物の一片ひとかけらが重力に従って堆積物へと沈んでゆくこの無言の降雪は、数億年にわたって目撃者なしに降り続けてきた海洋の炭素記録なのだ。

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