DIC干渉で刻まれたピンナラリア
Diatoms

DIC干渉で刻まれたピンナラリア

珪藻の一種であるピンヌラリア・ノビリスの弁を真上から見下ろすと、微分干渉コントラスト光学系が生み出す斜光によって、直径150マイクロメートルの珪酸ガラスの平原が鍛造された金属のような起伏をまとい、地平線まで広がる大陸のように視界を満たしている。横断肋条(コスタ)が等間隔に連なる稜線として東西に整然と走り、その一本一本が骨白色の光の峰と鳩羽色の影の谷を交互に刻む一方、南北の軸を貫く中央胸骨は白く輝く大路として景観を左右に二分し、その連続性を断ち切るラーフェ裂溝は分子レベルの精度で刻まれた峡谷の闇として垂直方向への深さを暗示する。珪酸シリカの半透明な床板越しに、フコキサンチン色素を宿すH字型の葉緑体二葉が琥珀色の内発光として透けて見え、表面の冷たい金属灰色と生命の温かな橙金色が二層の世界として重なり合っている。その中央に位置する核は、磨りガラスの球体のごとく淡い乳白色で静かに輝き、数百万年後の堆積岩にまで刻み込まれる生体鉱物彫刻の精緻さと生命そのものの柔らかさとが、一枚の細胞のなかに同時に宿っている。

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