深海の青の中に浮かぶ視線の先に、琥珀色に輝く小さな球体がひとつ、宇宙に浮かぶ月のように視界を支配している。これはエミリアニア・ハクスレイという円石藻の細胞であり、その表面を覆う二十枚の方解石製の車輪状プレート——円石——が精密な幾何学模様を描きながら隙間なく組み合わさり、生物が作り出したとは思えないほど整然とした鎧を形成している。細胞内部に詰まった葉緑体が橙金色の光を滲ませ、その柔らかな輝きは薄い細胞膜を通して周囲の水へと溶け出している一方、各円石の結晶面は上方から降り注ぐ480ナノメートルの青い光を捉えては、氷青から菫色、刹那の薄荷緑へと砕け散る小さな虹を瞬かせる。視野の外縁では、脱落した円石が数枚、ブラウン運動の熱的揺らぎに乗ってゆっくりと回転しながら漂い、それぞれが光を掴んでは手放す小さな円盤として深いウルトラマリンの闇に消えていく。この炭酸カルシウムの微細構造は、海洋の炭素循環における生物ポンプの重要な担い手であり、細胞が死を迎えるとき、この鎧は海底へと沈降して何千万年もかけてチョークや石灰岩の地層を積み重ねていく。
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