砂粒の腹毛類卵保育所
Gastrotrichs & meiofauna

砂粒の腹毛類卵保育所

砂粒の湾曲した側面に体を押しつけると、その半透明な壁がトラックの荷台ほどの高さで迫り、眼下のバイオフィルムのくぼみには四つの淡金色の卵が付着糸に固定されて並んでいる。それぞれの卵殻は六角形の網目状模様を刻まれたコリオンで覆われ、粒子を透過してくる青白い冷光が下方から卵内部の卵黄を琥珀色に灼いて浮かびあがらせており、割球ごとに区画された十六細胞期の桑実胚では暗い膜の縫い目が蜂の巣格子のように輝いて見える。卵を固定する付着糸はEPS(細胞外多糖物質)の琥珀色の起伏の上を極細のガラス繊維のように張りわたり、その周囲では棒状細菌が杭列のごとく林立してバイオフィルムという地形を構成している。視野の左縁から現れた扁形動物の渦虫は、一枚の温かみある褐色の生きた組織として、前端の鈍いクレセント状の縁をゆっくりと前方へ押し出しながら細菌の絨毛を踏み均し、化学物質の濃度勾配を感知する繊毛は見えないまま最も近くにある未分割の卵へと着実に距離を縮めていく。

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